トラウマ教師

あん時は、すげートラウマになった。


俺が小学六年生のころ。
そのときの担任教師はいわゆるヒステリック女で、
授業中なのに、ちょっとなんかしたら
隣のクラスのセンコー呼んでまで俺らのことほったらかしてわざわざ図書室で怒るし、
もうホント最悪な教師だった。

図工の時間、「色の塗り方が違う」と、その子の筆を奪って勝手に塗って、その子泣いちゃって。
んでその子の母親が怒ってそいつに電話したら、
「私は塗り方が違うなんて一言も言ってません。ただ、こうしたほうがいい。と言ったんです。」
とか言ったらしい。

それとか、読書感想文で、うちのクラスからは一人。女の子が選ばれて、
一度書いた感想文をもう一度考えて改良して清書するはずだったんだ。
でもそいつが全部直して、女の子が書いた読書感想文の面影はまったくないくらいに
それは変わってた・・・。 

一時期「先生の悪いところがあったらこの紙に書いて」とか言われたけれど、
そんな「すべてが悪いです。死んでください」なんて書けるわけなかったから、
結局センコーは何にも直らないまま。
自分だけ反省した気になっ ているだけのただの自己満足に過ぎなかった。


俺だって怒られたことはあった。今思えば六年一組全員一度は怒られてたと思う。


俺はあいつのことが心から嫌いだった。憎かった。殺したかった。
みんなもそいつのこと嫌ってたしクラス全体でそいつのこと嫌な目で見てたのかもしれない。

でもある日の昼休み。

センコーはまた男子のこと怒ってたから、「またかよ〜」って、友達とトランプでもしながら
説教に何気に耳を傾けてた。

そしたらその怒った声がだんだんだんだんぐずり声になってきたんだ。
俺たちは顔を見合わせてぐずり声になったセンコーの説教を聴いてたんだ。
やりかけのトランプをほったらかして。そしたら案の定センコーは泣いた。
怒られてるほうも泣かれたのは初めてだからかなりびびってた。
もし俺がそいつの立場に立たされたらぜったいビビる。
でもそこでチャイムが鳴ったからその場は逃れられた。

その時期は3月で、日にちも卒業に近かったから、授業は昼まで。
でも今日は大掃除があるから午後からは掃除だったんだ。

みんな教室に集まってきて、全員が席に着く。机 は後ろに下げている状態で、
センコーはみんなから少し離れたところにいた。
そしてセンコーは喋り始めた。先ほど泣いていたからか、目の下は少し赤くなっている。

センコーが話す内容は、掃除のことでも明日の予定のことでもなかった。さっきの怒ったことだった。
どうでもいい話だったので俺は知らんぷりしてた。帰りの用意もしてあったから、
カバンで顔を隠して見えないようにしていた。あの時はカバンだけが自分の顔を隠す最高の防具だった。

どれだけ聞きたくなくても話だけは耳にどうしても入ってくる。
それだけは避けられない。
センコーは話してゆくうちにいつの間にか俺らが怖いなどと言い出した。
「はぁ!?」
みたいなリアクションを頭の中だけでとっていた。


「先生は、あなたたちの前に立つのが怖い。みんなの目が怖い。」
そういいながらセンコーは泣き崩れた。
みんな相変わらず冷たい眼をして視線をそらしている。

そのときの空気は地獄のように重苦しく、みんな何をすれば良いのかわからなかった。


結局一番つらかったのはセンコーなのかも。でも、いまさら許してたまるか。
俺はあいつのこと大嫌いだったんだから。

でも、今でもあの時のことは忘れられないトラウマみたいなモンになっている。

すっげ怖かった。




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