トンネル

(´・ω・`)やぁ
yさんからの投稿なんだ楽しんでいってくれよ


ある日の深夜、若い女性が家への帰り道を歩いていた。彼女の家は、“出る”という噂のトンネルを抜けた先にある。しかし、これまでに彼女はそこで何もおかしなものを見たことはなかったので、トンネルのことは特に気にしないでいた。
ところが、いざトンネルに差し掛かってみると、この日は様子がおかしい。何かのトラブルがあったのか、トンネル内の電灯が全て消えていたのである。こんな時間に、明かり一つ見えないトンネルを抜けるというのは、なんとも心細いものだ。彼女がトンネルの入り口で躊躇していると、後ろから「どうしました?」と誰かが声をかけてきた。振り返ると、そこには若い警官が立っている。彼女が事情を説明すると、警官はそれならば自分が手を引いて案内するので、一緒に向こう側まで行きましょうと申し出てきた。警官の持つ懐中電灯の細い明かりに照らされたトンネルの中は、いつもとは異なりかなり不気味な表情を見せている。彼女は何か変なものを見てしまうことを恐れて目をつぶると、警官に手を引かれるまま暗闇の中を歩いていった。
「つきましたよ」
やがてそんな声が聞こえ、彼女は恐る恐る目を開いた。彼女の立つ少し先には、確かにトンネルの向かい側が見える。ところが、彼女の前を歩いていたはずの警官の姿がそこにはなぜか見当たらない。懐中電灯の明かりも、いつの間にか消えてしまっている。しかし、それでも誰かの手が彼女の右手をつかんでいる感触は、いまだにしっかりと感じられるのである。彼女が恐る恐るという感じで辺りを見回すと、彼女を握っている手は、トンネルの壁一面からびっしりとはえた無数の手のうちの一本であった。

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