優しい手

大学の頃、所属していた写真部の暗室に、
「とんとんさん」「ひたひたさん」って呼ばれている
「なんだか分からないモノ」がいた。
学園祭前、作品のプリントを徹夜で仕上げていて、
ついうとうとしてしまうと、
とんとん、ひたひた、と背中を叩いて、
優しく起こしてくれるんだそうだ。
僕は目撃も体験もしたことがなかったけれど、
「見える」後輩が、叩かれた瞬間、さっと振り向いたら、
白い女の人の手が、すうっと消えてゆくところだったという。
泣ける話ではないんだが、親切なおばけ、ということで。
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