荒らし駄目絶対!!

少年がいた。 いや、もう少年と呼べる年頃では… 人より秀でている所も無く、いなくとも誰にも気にかけてもらえない、そんな彼。 彼の唯一の慰めはインターネット。 それも人の掲示板に匿名で乱入しては、誹謗・中傷を繰り返す、所謂「荒らし」と言われる行為。 相手を罵倒する事で、普段誰にも気にかけてもらえない自分が、何となく大人物になったような…それが彼の心の糧だった。 ある晩。 いつものように、ある掲示板を覗く。 彼の書き込みに対して、憤怒の声があがっているのを確認して、ほくそえむ。 そして、次の書き込みを終えた時、 (ひとおつ…うふふふふふ) 彼は思わず後ろを振り向いた。 誰もいるわけがない。 今この家には母親と自分の二人きり。 空耳だ。当たり前じゃないか。 ちょっと額の汗を拭き、次の書き込みをする。 (ふたあつ・・・きゃははは) その幼い声に彼はびくんと立ち上がった。 そうっと辺りを見回す。 子供?思わず時刻を確認する。午前3時33分。 子供がこんな時間に起きているわけが・・・ しかし、一応部屋の外も確認する。何も無い。疲れているのかな? 今日はもう寝ることにしようかな・・・ そう思い、彼はPCを終了させた。 次の日、おそるおそるPCを立ち上げる彼。 ちょっといつもより軽めの中傷を書き込む。 ・・・何も起こらない。 彼はくすくす笑った。馬鹿らしい。 そうだよな、そんな事あるわけない。 彼は猛烈な勢いで、次の書き込みを始めた・・・ 数週間後、彼は体にそこはかとない変調を覚えた。 しかし、なんとは無しに日々を過ごしていた。 それから更に数ヵ月後、母親が彼に言った。 「お前、最近ほくろが増えてないかい?」 検査の結果、彼は末期の皮膚癌で、間もなく昏睡状態に陥った。 医者も首を捻ったのは、転移の仕方だった。 「最初は内臓に癌が発生したのは間違いないのですが、何故癌細胞があちこちに点在しているのでしょうね・・・まるで子供がでたらめに印をつけたように・・・」 今、誰も感じる事の出来ない彼の意識の中では、 「アハハハハ・・・ななぁつ」「うふふふふ・・・じゅうにぃ」と子供の数え歌が途切れることなく続いている・・・
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