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私は、今日泊君の話を聞いていて、段々と寒気を感じていました。
すぐに今日泊君の話を止めさせるべきでした・・・
「何とか生き延びた牛ノ首衆は、織田信長に身を寄せたんだ」
「信長は、牛ノ首衆の力を利用するため、本願寺に復讐するための協力を惜しまないと、生き残った牛ノ首衆達に約束したらしい」
「そして信長は、牛ノ首衆のため、大勢の生け贄や死体を用意してあげたそうだ」
「それからというもの牛ノ首衆達は、毎日、恐ろしい儀式を続けたんだ」
「その悲惨な光景を見た人達は、道徳的な話をし、牛ノ首衆達に儀式を中断するように説得したらしい」
「でも牛ノ首衆達は、仏法めいたことなど聞きたくもない。」
「どうしても、そんな話を俺たちに聞かせたければ、俺達が死んでから御経でも唱えやがれ、と言い捨て、儀式を中断しなかったそうだ」
「そして牛ノ首衆達は、信長に沢山の加工した頭蓋骨を献上したらしい」
「その頭蓋骨に宿る怨念は、凄まじく、信長に敵対する人々を次々に病気にさせたり呪い殺したそうだ」
「頭蓋骨の怨念は、使えば薄れていくため、牛ノ首衆達は、信長のために、たびたび呪いの頭蓋骨を作るようになったんだ」
私は、今日泊君の話を聞いているうちに、後ろから誰かの視線を感じていました。
あの時は、「気のせいだ」と自分にいいきかせていましたが、今は、あの時に感じた視線は、決して気のせいなんかじゃないことを知っています。
「呪いの頭蓋骨を持つ信長には、村正の怨念すら通用しなかったそうだ」
「村正は、凄まじい怨念が宿っており、妖刀と恐れられた日本刀なんだけど・・・」
「村正に興味を無くした信長は、家臣の秀吉に褒美として村正をくれてしまったそうだ」
「秀吉は、村正のせいで色々な怪奇現象に遭遇し、ビビッタ秀吉は、すぐに村正を手放したらしい」
「武田信玄や上杉謙信も、信長が呪いの頭蓋骨を使って呪い殺したのかもしれないな」
「信長は、茶会の時に、朝倉義景や浅井長政の首で作った、呪いの頭蓋骨を客人に見せびらかし、自慢することもあったんだ」
「それだけ信長は、呪いの頭蓋骨に絶対の自信を持っていたんだな」
「でも信長は、天下統一を果たそうとしていた矢先、牛ノ首衆の力を自分以外の人間に利用されることを恐れ、牛ノ首衆を一人残らず殺してしまったそうだ。」
「しかし、それから間もなく信長は、家臣の明智光秀が謀反を起こし、殺されてしまったんだ」
私は、牛の首の呪いを受けています。
今でも、この呪いを取り去る方法を考えているのです・・・
「俺が、この話を聞き終わった時に、誰かが俺を見ている気がしてきたんだ」
「俺は、何となく誰かの視線を感じる、と親父に言ったら、親父が言ったんだよ」
「それは、牛ノ首衆の悲劇に関わった人達の、怨念だろう」
「この話を聞いた者は、多かれ少なかれ、あの人達の怨念に付きまとわれるんだ」
「だが、人々を慈しみ、仏法を心がければ、必ず御仏が怨念から守って下さる」
「俺には、その親父の言葉が、心に食い込んでしまったんだよ」
「それ以来、俺は、仏教関係の本を読むようになったし、なるべく人が喜んでくれるようなことをしようと、心がけるようになったんだ」
今日泊君が、そう言い終わった途端に、蝋燭の炎が消えたのです。
私を含め、その場に居た人は、みんな驚き声を上げました。
そして「ビックリしたぁー」と言いながら、私は、手探りで蛍光灯の明かりを付けました。
ところが、私が床に座った途端に、蛍光灯の明かりが独りでに消えたのです。
私達は、声にならない叫び声を上げていました。
首や手、足や胴体など、バラバラになった人間の体が・・・
しかも、沢山のバラバラになっている人間の体が、私達の体に、まとわり付いてくるのです。
私は、そのまま気を失ってしまいました。
私は、牛の首の怨念に、付きまとわれています。
今の所、生きていく上では、それほど支障にならないかもしれませんが・・・
私は、今日泊君に揺り起こされ、目を覚ましました。
今日泊君に私は、自分の見たバラバラの体について話したのですが、今日泊君は、「何も見なかった」と言います。
でも今日泊君は、私の話を信じてくれました。
今日泊君も、今まで何度も誰かの視線を感じたことがあったそうです。
それに、私達が気絶した時、「物凄い寒気がした」と言いました。
今日泊君は、他のみんなも揺り起こしていきましたが、みんな私と同じことを今日泊君に訴えます。
あの時から私は、常に誰かの視線を感じるようになりました。
また眠る時など、目を閉じた状態の時に、あのバラバラの体について思い浮かべてしまうと、すぐにバラバラの体が私の体に、まとわりつくようになったのです。
今日泊君を除く、あの場に居たみんなは、私と同じ現象に悩まされるようになりました。
そして、みんな今日泊君を避けるようになったのです。
私も今日泊君を意識的に避けていたのですが、ある日、今日泊君から電話が・・・
会話の中で今日泊君は、私に「もし、よかったら、俺と付き合ってくれないか?」と告白してきました。
私は、とても今日泊君と付き合う気分になれず、言葉を選び、丁寧に断りましたが、恐らく、それが今日泊君との最後の会話になるのだろうと思います。
もう二度と、今日泊君と会うことは、ないでしょう。
私は、この体験談を多くの人に知ってもらいたいと、昔から考えていました。
しかし、それは、絶対的なタブーのように思えます。
今も、その気持ちが、この書き込みにブレーキをかけ、私を躊躇わせているのでしょう。
私は、霊能者に除霊を頼んだことがあります。
霊能者の人は、私を見るなり「絶対に除霊をしたくない」と言って断りましたが、私は、無理に頼み込んで除霊してもらうことになりました。
霊能者の人は、しばらく除霊をしていたのですが、突然「早く、ここから立ち去れ」と叫び、私を突き飛ばすのです。
私は、恐ろしくなり、すぐに逃げ出しました。
その後、その霊能者は、発狂し、今も精神病院に入院しています。
半年ほどしてから私は、再び除霊をしてもらいたいと思いました。
今度は、有名な退魔師に、お願いしましたが、退魔師は、険しい表情をしながら私を見つめています。
しばらくしてから退魔師は、「何とか、やってみます」と言って、除霊を引き受けてくれました。
退魔師の除霊は、何時間もかかり、退魔師の疲労が私にも伝わってきます。
そして突然、退魔師が倒れ込んでしまいました。
退魔師は、苦しそうにしながら「早く、ここから立ち去れ」と私に向かって叫ぶのです。
私は、恐ろしくなり、その場から逃げ出しました。
その後、その退魔師は、包丁で首を切り、自殺したそうです。
私は、今、この書き込みにより、牛の首の怨念が薄れることを期待しています。
「何故、私を除霊してくれた霊能者は、発狂し、退魔師は、亡くなってしまったんだろう・・・」
「私に牛の首の怨念が憑いているのは、間違いないけど、私は、それなりに普通の生活をしているし、まだ、ちゃんと生きているのに・・・」
私は、時々そんなことを考えてしまうことが、多くなりました。
もしかしたら、私の除霊をしてくれた霊能者と退魔師は、牛の首について、全ての真実を知ってしまったのでは、ないでしょうか?
今日泊君が話した牛の首の内容は、ほんの少しだけ、牛の首の秘密について、伝えているだけなのかもしれません。
だから、私は、まだ生きているのに、私の除霊をしてくれた霊能者は、発狂し、退魔師は、亡くなったのかも・・・
それでは、牛の首の怨念を消し去ることは、絶対に不可能なのでしょうか?
確か、今日泊君の話では、呪いの頭蓋骨を利用し続けると、頭蓋骨の怨念が薄れていくはずでした。
もし、それが本当だとしたら、多くの人が牛の首の話を知り、牛の首の怨念を多かれ少なかれ引き受けてくれると、しだいに牛の首の怨念が消えていくのでは、ないでしょうか?
そう考えた私は、牛の首について、私の知っている全てを、ここに書き込みしました。
早く牛の首の怨念が、消え去りますように!
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